三光丸
Since 1319
三光丸は、鎌倉時代後期の元応年間(西暦1319~)には「紫微垣丸(しびえんがん)」という名で造られていました。その後、後醍醐天皇により「三光丸」と名付けられたといいます。
三光丸の「三光」は、日(じつ)・月(げつ)・星(せい)の光を意味しています。また、後述しますが「星」は「金星」のようです。三光丸クスリ資料館所蔵の古い版木(江戸時代)によれば、越智家第11代の当主、越智家武(いえたけ)が北極星の神より霊験を得て「紫微垣丸」の製法を授かり、その後南北朝時代にいたって、後醍醐天皇より太陽・月・星の神から授かった秘方を意味する「三光丸」の名を賜ったとされています。
北極星の神から授かったという伝説はともかく、日本中世文化史の研究者である黒田智氏によれば、南北朝時代、後醍醐天皇の周辺には、日・月・星の三光を天皇権威と結び付ける「三光思想」が定着していたようで、有名な古典文学『太平記』にも、後醍醐天皇が倒幕を祈願した際に太陽・月・金星が並んで出現し、それをご覧になった帝が“自分の願いがかなう”と喜ばれた様子が記されています。
三光丸の当主米田家は、中世大和国で勢力をほこった豪族越智氏の流れをくむ家で、越智党内にあって興福寺や金峯山寺、多武峰、春日大社など有力寺社との折衝役をつとめるかたわら、医薬の道を一手に引き受けていました。南北朝時代、越智氏は後醍醐天皇の南朝方に味方しており、後醍醐天皇による“三光丸命名”が実話である可能性は高いと考えています。
和漢胃腸薬 三光丸のご紹介
和漢の生薬を配合
自然の山野に自生する草根木皮の中には、薬物として効き目があるものがあります。
これらを生薬(しょうやく)と呼び、三光丸にはこのうちセンブリ、オウバク、ケイヒ、カンゾウの4種類が配合され、着色料として薬用炭が使用されています。
三光丸は、これら生薬の相互作用・相乗効果で、胃弱、食べすぎ、食欲不振、飲みすぎ、もたれ、胃部・腹部膨満感、胸やけ、胸つかえ、はきけ、嘔吐などの不快な症状を改善します。
センブリ(千振・当薬)
リンドウ科の2年草の草本で、草丈は5cmから40cmほど、花は5弁で白色または薄い紫色を呈し、9~10月頃の開花期に採取し、乾燥して全草(花から根まで全部)を使用します。
センブリは日本固有の薬草で、昔からいわゆる民間薬として使用されてきました。漢字表記の「千振」とは“千回振り出し(煎じる)てもまだ苦い”ことからついた名であり、「当薬(とうやく)」は“当(まさ)に薬である”という意味です。この二つの言葉から、センブリが非常に苦く、かつ、とてもよく効く薬であることがわかります。産地は栽培品が長野県、高知県となっており、天然の採集品は東北地方で集められています。
三光丸ではセンブリを1日量(原生薬センブリの量として)0.9g使用していますが、昔から作られてきた多くの胃腸薬はオオバクエキスが主成分であり、センブリを使用しても0.05g程度のものがほとんどです。この点が三光丸の大きな特徴であり、効き目の秘訣といえるでしょう。
センブリの薬効成分は主に苦味配糖体(セコイリドイド配糖体)で、スウェルチアマリンが最も多く2~4%、他にスエロサイド、ゲンチオピクロサイド、アマロゲンチン、アマロスエリンなどが含まれています。この中でアマロスエリンが最も苦味が強く、天然物で見いだされる最強の苦味物質のひとつです。
センブリの効能効果としては唾液および胃液、胆汁、膵液の分泌増加作用、中枢抑制作用、肝機能障害抑制作用などがあり、最近の研究ではピロリ菌の増殖を阻害するはたらきが報告されています。
また、センブリエキスには毛細血管拡張や皮膚細胞活性化が認められることから、育毛剤や化粧品としても利用されています。
オウバク(黄柏)
オウバクは、「ミカン科」の高木で樹齢15年以上のキハダの樹皮です。キハダの樹皮はふたつの層に分かれており、外側のコルク層を取り去って内側の黄色の内皮を乾燥させたものがオウバクです。
キハダの樹皮をはぐ作業は、梅雨の後半から7月下旬にかけて、木の水揚げが多くなる頃に行われます。この時期には外側のコルク層を取り除く作業がきれいにできるからです。
漢方では、オウバクは薬味「苦」、薬性「寒」とされ、火を瀉(しゃ)し、湿を乾かし、熱を清め、毒を解すとされています。三光丸はこれらの性質を利用し、苦味健胃、整腸、消炎性収斂薬の目的で原料に用いています。
日本各地でも、民間薬として古くから胃腸薬や火傷(やけど)の塗り薬、湿布薬、目薬としても広く利用されています。オウバクを利用した古くからの薬は、三光丸以外では「陀羅尼助」、「練熊」、「百草」が有名です。薬以外にも、古くから黄色のアルカリ性染料として用いられています。
オウバクの主成分は黄色のアルカロイド「ベルベリン」で、1~4%ほど含有します。その他のアルカロイドとしては、パルマチン、マグノフロリンなどを微量、苦味質としてはオウバクノン、オウバクラクトンなどを含みます。水溶性の粘液成分もあります。
薬理作用としては、主成分ベルベリンに、大腸菌、チフス菌、コレラ菌に対する殺菌作用があるほか、グラム陽性菌、陰性菌及び淋菌に対して抗菌作用が強く、病原性寄生虫(マラリヤ等)には殺虫作用があります。オウバクエキスには、血糖降下作用、血圧降下作用、胆汁分泌促進作用、抗貧血作用、止冩作用など多くの作用が確認されています。
ケイヒ(桂皮)
ケイヒはクスノキ科の常緑の高木「シナモンカシア」の樹皮を乾燥させたもので、大別するとベトナム産や中国産のカシアと、セイロン(現在のスリランカ)やインドネシア産のシナモンの系統に分かれます。カシアの系統のケイヒは薬用として用い、シナモンの系統は食用に適しているとされていました。三光丸は広南ケイヒを主に使用しており、香りを引き立たせる目的でベトナムケイヒも少量使っています。
漢方ではケイヒは薬味「辛・甘」、薬性「温」とされ、風寒を解し、四肢に横走し、経を温め、絡を通ず、といわれております。このためケイヒは健胃、発汗、解熱、鎮痛薬として多くの処方に用いられています。三光丸も健胃や鎮痛の目的として配合してあります。
成分としては、香気の強い精油が1~3%含まれ、このほとんどがケイアルデヒドです。その他オイゲノール、ジテルペン類など多くの油性成分があります。精油成分の他にはケイヒタンニンが含まれ、このタンニンには別の有効な薬効があるのではと注目されています。
ケイヒの薬理作用としては水製エキスや精油成分等で発汗解熱作用、抗アレルギー作用、血圧降下作用、体温降下作用、腸管運動促進作用、ストレス性胃びらん予防作用、胆汁分泌促進作用、抗菌作用、抗かび作用、末梢血管拡張作用などが確認されています。冷え性予防のため入浴剤に使用したり、鎮静効果を目的としてアロマオイルに用いたりもします。
ケイヒはまた、ピロリ菌が胃酸から身を守るために分泌するウレアーゼの活性化を阻害することから、ピロリ菌の除菌治療薬としての研究も行なわれています。
ケイヒは薬以外にも「シナモン」という呼び名で食品とし流通しています。香辛料としてカレーやソースに用いられ、菓子の「八つ橋」、飴、ケーキにも使われます。ニッキ飴やニッキ水でなじみ深い「ニッキ」は日本産のケイヒ「肉桂」の根の皮で、以前は駄菓子屋で束にして売られていたものです。
カンゾウ(甘草)
カンゾウ(甘草)は「マメ科」の多年草(植物名)カンゾウの走根(ほぼ地表を横に走り、別の所でまた立ち上がるような根のこと)や根を乾燥したもので、ヨーロッパ南東部、中近東、中国に分布しています。
カンゾウは広く世界中で用いられてきた最古の薬物のひとつであり、紀元前にTheophrastus(テオプラストス:古代ギリシャの哲学者、植物学者)の著書に登場し、中国では神農草本経に記されています。また、奈良の正倉院には、良質のカンゾウが多量に保存されています。
漢方におけるカンゾウは、別名「国老」(国王の助言者)と呼ばれ、最上級の薬に分類されています。薬味「甘」、薬性「平」とされ、「脾胃の不足を補い、心火を瀉す」とされ、鎮痛鎮痙、解毒作用、肝機能の強化、去痰、消炎の目的で使用されます。三光丸もこれらの性質を利用して解毒、消炎、鎮痛などの目的で配合しています。
味の甘さを利用した矯味(きょうみ=苦い薬を飲みやすく味つけすること)目的もあって、「葛根湯」をはじめ「安中散」「小青竜湯」など、全漢方処方の8割近くに配合され、現在市場で流通している一般薬、配置薬でも、かぜ薬や胃腸薬の中に矯味や薬効を目的として多く配合されています。
「甘草」という文字が示すように、砂糖の150倍以上の甘みを持つといわれるサポニンのグリチルリチンが主体で、その他にもトリテルペン配糖体、フラバノン配糖体、カルコン配糖体などが含まれます。
主成分のグリチルリチンおよびその分解物であるグリチルリチン酸や、カンゾウエキスには、抗消化器性潰瘍作用、胃液分泌抑制作用、潰瘍修復促進作用、解毒作用(肝臓で有毒物質と結合して無毒化する)、抗アレルギー作用、抗炎症作用、免疫活性作用、アジソン病に対する効果、鎮痛鎮痙作用、鎮咳作用など、広範囲な薬理作用が確認されています。
最近では、免疫力が無くなるエイズの治療薬として使用され、一時世界中で話題となったSARS(重症急性呼吸器症候群)の治療薬としての研究も行なわれています。
一方カンゾウは、天然甘味料としても古くから用いられており、化学合成甘味料がほとんど使用できなくなった昨今は、醤油、味噌、ソース、佃煮、漬物、菓子など一般食品に使用されています。
700年の知恵と最新技術の融合
三光丸が誕生したのは今から700年ほど前と考えられています。
三光丸の当主、米田家には、数百年前に記された薬の『秘伝書』が伝えられており、それを見る限りでは、当時から現在にいたるまで、原料と配合比にはほとんど変化がなく、はるか昔から、三光丸がすでに完成された薬だったことを物語っています。
明治以降、製丸機をはじめとする製造機器・施設の近代化を積極的に推し進める一方で、薬の内容は変える必要がなかったのです。
“生薬を生かす”原料の吟味と保管管理
三光丸はセンブリ、ケイヒ、オウバク、カンゾウを原料とする丸剤です。和漢薬のいわば”生命”ともいえるこれらの生薬原料は、もともと自然界の産物であり、気候や風土によって品質の良否が左右されるため、原料の吟味にはとくに力をいれています。
また、たとえ良質な原料でも、保管状態が悪くては意味がありません。三光丸では、生薬原料を種類別に低温倉庫と常温倉庫に分けて保管し、変色や有効成分の分解が生じないよう努めています。
一貫した自社製造と厳密な品質管理
三光丸の生産は、原料となる生薬を「生(しょう)」、すなわち根や茎、葉など植物の原形をとどめた状態で購入して粉末・エキス加工することから始まり、最新の設備による製丸、そして包装にいたるまで一貫して、すべて自社で行っています。
また、厳格な製造および品質管理基準を設け、高度な分析技術を身につけたスタッフが最新の機器をフルに使い、定量試験や崩壊試験をはじめ、生薬原料のひとつひとつから製品にいたるまで、製造の段階ごとに入念な理化学試験を行っています。
成分・分量、用法・用量の詳細について
成分・分量(1日量90粒中)
センブリエキス | 450mg(原生薬センブリ900mg相当) |
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オウバク末 | 900mg |
ケイヒ末 | 900mg |
カンゾウ末 | 450mg |
着色剤薬用炭 | 126mg |
その他 | 結合剤として寒梅粉、米粉を含有 |
効能・効果
食欲不振、胃部・腹部膨満感、消化不良、もたれ、食べすぎ、飲みすぎ、胸やけ、胃弱、胸つかえ、はきけ、嘔吐
用法・用量
次の量を食後に温湯または水にて服用してください。
年齢 | 1回量 | 服用回数 |
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成人(15才以上) | 30粒(1包) | いずれも 1日3回 |
11才~15才末満 | 20粒 | |
8才~11才末満 | 15粒 | |
5才~8才末満 | 10粒 | |
3才~5才末満 | 7粒 | |
3才未満 | 服用しない |
(1)医師の治療を受けている人は、服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください。
(2)1ヶ月位服用しても症状の改善がみられない場合には、服用を一時中止し、本品を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください。
(1)定められた用法・用量を厳守してください。
(2)幼児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させてください。
(3)3才以上であっても幼児に服用させる場合には、薬剤がのどにつかえることのないように、注意してください。
(1)小児の手の届かない所に保管してください。
(2)直射日光をさけ、なるべく(湿気の少ない)涼しい場所に保管してください。
(3)誤用防止と品質保持のため、他の容器に入れかえないでください。
(4)使用期限を過ぎた製品は服用しないでください。
(5)1包を分割した残りを服用する時は袋の口を折り返して保管し、2日以内に服用してください。
三光丸の包装についての説明
三光丸の包装は二重包装で清潔。持ち運びの利便性と品質保持を追求し、コンパクトなシートタイプとなった内袋(縦35mm×横70mm)は、密封性・保存性を高めるためPET(ポリエステル樹脂)シートにラミネート加工をほどこし、その構造は四重※になっています。
※①PET(ポリエチレンテレフタレート)②ポリエチレン③アルミ箔④ポリエチレン
三光丸の内袋の上手な開け方・飲み方
下記のように正しく開封すれば、丸薬が袋の隅に残ることもありません。
手順1:袋の裏面、「▲切り口」と書かれた部分をはさむように持ちます。
手順2:「▲切り口」に合わせるようにして袋を手で切ります。
手順3:袋の両端を、手ではさむように持ちます。
手順4:両側から少し力を入れて、袋の中央が筒状にふくらむようにします。
手順5:そのままの状態で中の丸薬を飲み、全部飲んだことを確認します。