日本にしかない和漢薬の原料・センブリを知っていますか
これまでのコラムでは、三光丸の主成分である4つの生薬についてご紹介してきました。今回はその中から、特に「センブリ」に注目してご紹介します。

日本の固有種で「三大民間薬」
センブリは、リンドウ科の植物で、日本では古くから薬草として活用されてきました。日本の固有種であり、国産のみの生薬として知られています。
また、ドクダミ、ゲンノショウコと並んで「三大民間薬」ともいわれ、昔から身近な薬草として親しまれてきました。
食欲不振や消化不良、胃もたれなど、胃腸の不調に関わる生薬として、今も大切にされている存在です。
今回は、そんなセンブリの特徴や歴史、そして三光丸との深い関わりについて見ていきましょう。
センブリとは? 日本にしかない和漢薬の原料
センブリのいちばん大きな特徴は、その強い苦みです。
センブリという名前は、「煎じて千回振り出してもまだ苦い」といわれるほどの苦さに由来するとされています。センブリは、古代や平安時代の書物にも登場するほど、古くから日本で活用されてきた薬草です。
もともとは田んぼの周辺など身近な場所にも見られた植物で、手に入りやすく安全なことから、広く使われてきました。
現在も野生のセンブリは確認されていますが、環境の変化に弱く、標高が高い冷涼な場所を好むなど、育つ場所が限られる繊細な植物です。
植物学者の牧野富太郎(まきのとみたろう)は、著書の中でセンブリのことを「トウヤク」と紹介しています。これは「当薬」のことで、「まさに薬」という意味です。よく効くことから、「医者だおし」と呼ばれることもありました。
センブリの苦みが胃もたれ・食欲不振・消化不良に役立つ
センブリの苦みのもとになっているのが、「スウェルチアマリン」という成分です。
この苦みが唾液や胃液の分泌を促し、胃のはたらきを助けることが知られています。
そのため、センブリは食欲不振や消化不良、胃痛、胃のむかつき、胃もたれなどの胃腸トラブルに役立つ生薬として用いられてきました。
漢方や和漢薬の世界では、自然の力を借りながら体を整えていく考え方がありますが、センブリもその一つです。
センブリはいつ採れる? 貴重な薬草の特徴
センブリは、花が咲く9月から11月ごろは、有効成分がもっとも高まる時期とされています。
この時期に、根をつけたまま株全体を抜き取り、日干しでしっかり乾燥させて生薬にします。センブリは花、葉、茎、根のすべて、つまり全草を薬用として使います。
センブリは、標高が高い冷涼な場所に育ちやすく、環境の影響を受けやすい植物です。そのため野生のものは育つ条件によって品質にばらつきが出ることがあります。
また二年草のセンブリは越冬するため、栽培に非常に手間がかかる植物でもあります。
三光丸とセンブリの関係

三光丸には、センブリ、ケイヒ、オウバク、カンゾウの4つの生薬が使われています。
その中でもセンブリは、特に重要な役割を果たす生薬です。
三光丸に伝わる江戸時代の記録を見ると、300年以上前の三光丸の処方に、すでにセンブリが使われていたとされています。
まさに、センブリは三光丸の命ともいえる存在です。
良質なセンブリを守るために
三光丸に使われるセンブリは、契約農家によって専門的に栽培されたものが使われています。
栽培されたセンブリは、野生のものに比べて品質が安定しやすいという大きな利点があります。良質な原料を確保することは、安定した薬づくりのために欠かせません。

三光丸では、品質を保つために原料の段階で成分の検査を実施しています。さらに、鮮度を保つために低温で保存し、常に3年分のセンブリをストックしています。
原料の管理は手間が掛かるうえに近年では、契約農家の後継者不足といった課題も出てきています。
それでも、国産の良質なセンブリは三光丸にとって欠かせない原料です。センブリ薬ナンバーワンを目指して、今も企業努力が続けられています。
自然由来のセンブリによって支えられている三光丸

三光丸の一粒一粒の中には、日本の風土の中で育まれてきた薬草の知恵と、長い歴史の中で受け継がれてきた工夫が詰まっています。
センブリのような生薬は、自然由来だからこそ、毎年同じように手に入るとは限りません。だからこそ、原料を見極め、品質を守り、安定してつくり続ける努力が必要になります。
胃もたれや食欲不振、消化不良といった不調に悩んだとき、三光丸の中にあるセンブリの存在を思い出していただけたらと思います。
日本にしかない和漢薬の原料を大切に守りながら、これからも三光丸は胃腸の健康を支えていきます。
まとめ
センブリは、日本の固有種であり、古くから薬草として親しまれてきた生薬です。
その強い苦みは、唾液や胃液の分泌を促し、食欲不振や消化不良、胃痛、胃もたれなどの胃腸トラブルに役立つとされています。
三光丸では、契約農家による栽培や成分検査、低温保存などの工夫を重ねながら、その品質を守っています。
胃痛、腹痛、胃もたれなどに使われる和漢薬の背景には、こうした生薬の力があります。
センブリを知ることで、三光丸という薬の価値を、より身近に感じていただけるのではないでしょうか。
アドバイザープロフィール

浅見 潤(あさみ じゅん)
三光丸クスリ資料館館長
北海道出身。平成12年、三鷹市教育委員会で遺跡の発掘調査と研究に携わる。その後奈良県明日香村に移住し、三光丸クスリ資料館館長に就任。館長職のかたわら、大和売薬および中世大和国の歴史研究を行う。日本薬史学会会員。
著書:『奈良とくすり -祈りと治療の歴史-』(京阪奈情報教育出版、2024年7月)
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